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スペインで現役のワゴン・リ

青きプリマドンナ・・・トランブルウ

 豪華車輛の代名詞として「青きプリマドンナ」とまで賞されるワゴン・リの車輛達ですが、其の始まりは19229年にイギリスのリーズの工場で完成した、ワゴン・リ社最初の鋼製寝台車でした。地中海ブルウと称される美しい車体に、ゴールドのラインニングと標記、其の気品有る姿は忽ち当時の上流階級の人々を虜にしてしまいました。この寝台車は、鋼製(Steel)=Sタイプと言われ、12室のシングル又はダブルのコンパートメントを持つ、当時としては豪華な車輛でした。直ぐ「カレー地中海エクスプレス」と「ボンベイエクスプレス」(マルセイユでインド航路と接続していた)に使用され、特にこの車輛だけで編成された「カレー地中海エクスプレス」は、其のカラーリングからか「トランブルウ(青列車)」と呼ばれる様になり、何時の頃からかこれがこの列車の正式名称となってしまいます。そう、日本のブルートレインの語源やカラーリングも、元はここにあります。その後、トルコやエジプト向けのSGタイプも登場しています。






Yのシングルの車内

 1926年には、各室に洗面台の付いたZ(ZigZag)が登場します。此の車輛はコンパートメントの仕切の形状からZの名が付けられました。1929年には尤も豪華なLx(Delux)が登場しています。この車輌はシングルのコンパートメントが10室しかなく、定員が僅か10人でした。その後一部又は全部のコンパートメントをダブルに改造して定員を増やしたLx16やLx20となった車輛もあります。晩年はスペインやポルトガルで使用されています。更に1930年には標準型とも言えるYが登場します。第二次大戦後も此の車輛の設計を踏襲したYTとして増備されています。1955年には全く新しいコンセプトの寝台車、Pがステンレス車体で製造されています。1957年にはU(Universal)が登場しました。此の寝台車は、それまでの車輛がフランス流の設計だったのに対してドイツ流の設計で、当時DSGが増備していた寝台車と同タイプです。特徴は各コンパートメントが3段の寝台を備えていた点で、下段のみ使用する時は1等、下段と中段を使用する時は2等、上、中、下段共使用する時は3等の運賃で乗車出来ました。その後、1957年には戦前製の旧型のYを3段化した車輛が登場し、そちらをUと呼び、新車はUHと呼ぶ事になった。また同時にエアコン付きとしたYCが、1963年にはスペイン向けYFも登場しています。そして、1964年にはYCの発展型M(Modern)と、UHの発展型MU(Modern Universal)が登場しています。正に近代型寝台車の代表で、現在もFSでは此のタイプを新製増備しています。1968年には、PとMUを組み合わせたワゴンリ最後の寝台車、T2が登場しています。T2とはT(Tourist)の頭文字で、中・下段を別のコンパートメントとしたもので、2人で使用する場合は2等運賃で乗車出来る事から此の名前が付けられています。これらとは全く別の寝台車としてFが有ります。これはロンドン〜パリ間の直通夜行列車「ナイトフェリー」用として製造された寝台車で、ワゴンリ初の全鋼製寝台車でもあります。第二次大戦後はロンドン〜ブリュッセル間の列車も増設され、1952年には増備車も登場し、一時はスイスへも乗り入れて来ていましたが、1980年には「ナイトフェリー」も廃止されてしまいました。





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