UIC-Z形について


 ICやECと言った次世代の国際列車が続々と運転される様になって来ると、当時の長距離用標準型客車であるUIC-Xは、TEE用に製造された客車等に比べ見劣りする様になって来ていました。また、国際列車の場合、各国の車輛によってアコモデーションの差が有り、その点も問題になりつつありました。その為、次世代の長距離用標準型客車としてUIC-Z形と言う規格を制定し、各国同一規格(設計)の元に製造しようと言う事になりました。

 UIC-Z形のコンセプトとしては、従来より広いコンパートメント(1等は10→9、2等は12→11と、1室少なくなっている)、冷房装置の取り付け、窓の固定化、半自動式のプラグドア等を採用するというモノで、当時のDBの最新式の1等車、Avmz111の末期形と、ほぼ同じ設備を持った車輛となっています。

 先ず、1970年にUIC-Zのプロトタイプとして、OEBBが1等車(Amoz)を1輛試作しています。この車輛は、折戸、スカート無し、ミンデンドイツ台車と、量産車とは大分異なる仕様でした。

 その後1973年に、1/2等車が各国で7輛、2等車がDBで1輛試作されました。DBでは、1/2等車のABvmz227を、ステンレス車体で4輛、鋼製車体で2輛、2等車のBvmz237をステンレス車体で1輛製造しました。FSではABzを台車を変えて3輛、SNCFではA6B6U、VSEを2輛製造しています。

 これらの試作車を用いて、各種長期試験が繰り返し行われました。その結果を基に、UIC-Z形の規格が決定され量産車が登場したのは1977年になってからです。最初の量産車は、DB、FS、OEBB、SBB、SNCBに、SNCFが、ユーロフィマの資金で導入しています。これらの車輛は統一されたスタイルで製造され、各国毎の差異は殆どありませんでした。この最初の量産車は、DBとSBB以外は1等、2等車の両方を製造しています。またカラーリングも、DB以外はオレンジにホワイトのラインと言うUIC-Z形の規格通り、オレンジユーロペン塗装に、フィアットのYO270という台車を履いています。DBだけは最初から規格破りを行い、TEEカラーで製造しています。

 その後1980年代になると、DBとSBBではオープンの2等車を登場させ、これらの車輛の台車がミンデンタイプに変更されています。また、OEBBが非冷房のUIC-Z形の2等車を製造した為、冷房付きがUIC-Z1形、非冷房がUIC-Z2形と改められています。この2等車からÖBBではSGPの台車を採用しています。更にOEBBでは、食堂車や2等荷物合造車を、SBBやSNCB等ではクシェットを製造する等、ヴァリエーションが増えています。

 これらの車輛はICやEC等の優等列車を中心に使用され、乗客からはとても好評でした。その為か、1989年からはMAV、翌1990年からはJZもUIC-Z形の製造を開始し、多少なりとも各国の事情に合わせたマイナーチェンジや改造が行われる様になって来ました。その中でも、DBやOEBB等で最近行われている、高速新線に対応した気密形構造タイプの新製や改造、SBBで新製したEC用客車等は、UIC-Zの規格外とされている様です。

 1970年代から現在まで、長年に渡り製造されているUIC-Z形ですが、もうそろそろ次世代の車輛へと主役の座をバトンタッチする時期に来ている様ですが、まだまだ各地で活躍する姿を目にする事が出来ます。